【簡単に解説】防火区画、防煙区画とは?と、その違い。

  • 2024年2月10日
  • 2024年5月3日
  • 法規, 知識
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なんとなくの理解でしかなく、曖昧な方も多いのではないでしょうか?
設計者ほど深く知らなくても、施工管理の方やPMの方もある程度理解しておくと、
設計者や諸官庁との協議をスムーズにできますし、
クライアントから聞かれた際に恥をかかずに済むと思います。

防火区画と防煙区画の違い

字面も似てますし、同じ図面に表記もされることもあるし、
口頭だと“防煙と防炎”を混同する場合もあるし、
似て非なるもの、のような印象がありますが、
「全く違うもの」と捉えることから始めて下さい。
共通ポイントとしては、
「建基法で定められている」「安全に関するもの」「区画を仕切るもの」くらいです。
「目的」「機能」「設置基準」等は全く異なります。それらを踏まえ以下をお読みください。

防煙区画

法律

施行令の第五章第三節 第百二十六条の二 避難施設に関する章

概要

火災発生時に、真っ先に問題になるのは、炎による熱ではなく煙です。
火災による死者の大半は、煙を吸い込んだことによる窒息死であり、
火熱による焼死は、火災による死者のごく一部だけです。
火元付近の人が避難する際、煙は重大な支障になるため、煙を屋外に排出する必要があります。
煙を排出する設備は排煙設備(排煙窓や排煙機)です。
煙というのは、広く拡散すると、だんだんと冷えて下がってくる性質があるため、
効果的な排煙のためには、煙の拡散を抑えることが重要です。
このため、一定面積ごとに防煙壁を設け、その範囲に煙を押しとどめる必要があります。
その機能を防煙壁がはたし、その防煙壁で形成された区画を「防煙区画」と呼びます。

防煙壁

間仕切壁、天井面から50㎝以上下方に突出した垂れ壁、
その他これらと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので不燃材料で造り、
又は覆われたもの、と定義されています。防煙垂れ壁として多く採用されている素材が
「ガラス」です。その他、不燃材として指定されていいて、
防煙壁に採用されている主な素材として、コンクリート、金属板、
厚さが十二ミリメートル以上のせっこうボードがあります。

設置基準

排煙設備が必要となる建築物で、
「床面積500㎡以内ごとに防煙壁で防煙区画しなければならない」という規定があり、
それぞれの排煙口まで30m以下の距離となるように区画する必要があります。
但し後述する排煙設備と同様、一定の要件を満たすと設置が免除されたり、
設置要件が緩和されたりします。他の安全措置をとる事で、同等の安全が確保されれば良い、
という考え方です。

排煙設備

『排煙設備』とは、火災時に発生した煙を屋外に排出し、避難時間を確保するための設備です。
一酸化炭素中毒を防ぎ、煙による視界不良で非常口を見失うリスクを避けることが目的です。
排煙設備の種類は、大きく分けて2種類です。

機械排煙設備
『機械排煙設備』は、排煙機器をつかって、ダクトを通して屋外に煙を排出する方式です。
機械排煙方式とは、文字通りですが、機械的な動力で排煙する方式のことです。
自然排煙方式と比べると、
煙の流れや排煙風量などをコントロールできる等のメリットがありますが、
ダクトやダクトスペース、予備電源等が必要になります。

自然排煙設備
自然排煙設備は機械的な動力を使わずに煙の浮力を利用して排煙する設備のことです。
火災が発生したときに、外に面する窓やガラリなどの排煙口を開放させて排煙します。
電源やダクトが不要で常時は換気として利用できるなどのメリットもありますが、
煙の流れを意図的にコントロールするのが難しいため、
特に高層ビルなどでは自然排煙は採用されません。

防火区画

法律

施行令の第四章 第百十二条 耐火性能に関する章

概要

大きな建物の場合、中の人が避難するのに長い時間が必要なため、
火災の範囲を狭く抑え込む必要があります。燃え広がりが遅ければ、
中の人が避難する時間を確保できます。
ある一定以下の面積を、耐火性のある床や壁で取り囲み、
そこから外に火災が広がらないようにする必要があります。
この「耐火性のある床や壁」で形成された区画が「防火区画」です。
また、防火区画を通過する扉は、基本的に防火扉や防火シャッターとすることになっています。

防火区画の種類

防火区画の種類には以下の4つがあります。
これら条件に合致する場合は防火区画を設置しなければなりません。

面積区画
建物の規模により防火区域をつくる基準が細かく決められています。
延べ面積が500㎡を超えるビルのうち避難時間が短い建物や準耐火建築物となっているものは
500㎡ごとの面積区画が必要ですし、
延べ面積が1500㎡を超えるビルは1時間準耐火基準に適合する壁と床を使用し、
さらに特定防火設備(防火扉など)を設置することなど細かい規定があります。

高層階区画
耐火建築物・準耐火建築物のどちらであっても「11階以上の階層」に対しては
高層階区画の面積区画規定が適用されます。
この規定は原則100㎡以内ごとに防火区画を設置しなければなりません。

竪穴区画
階段やエレベーターシャフト、吹き抜けは煙や炎が上の階に登りやすく延焼しやすくなります。
そのため3層以上の竪穴には、竪穴区画を設置する必要があります。

異種用途区画
同じビルが事務所や飲食店、工場などさまざまな用途で使われる場合は、
空間相互を防火上有効な壁・床・開口部で区画しなければなりません。

仕様

耐火性のある素材と言えばコンクリート、内装壁だとLGS(ライト・ゲージ・スティール)
+石膏ボードが多く採用されています。
耐火性をもつ扉は鉄筋コンクリート製や土蔵造のもの、
枠を鉄材又は鋼材で造り網入りガラスを使ったものなど多くあります。
ただしこれら扉を防火区画に使うためには国土交通大臣が定めた構造方法に準じたもの、
または国土交通大臣の認定を個別に受けたものでなければなりません。

防火シャッター
通常のシャッターとは違い、防火シャッターは厚みがあり熱にも耐える頑丈なものです。
エスカレーターやエレベーター、階段など空間のある場所は炎や煙が回りやすいため、
それらを防ぐために防火シャッターが設置されています。
防火シャッターが閉まることで防火区域が機能します。

石膏ボード
石膏ボードが火災に耐えられる時間は石膏ボードの厚みと関係があります。
・厚さ12.5mmの石膏ボード1枚の耐火時間は15分
・厚さ12.5mmの石膏ボード4枚の耐火時間は1時間
1時間の耐火時間が必要な壁の場合、
12.5mmの石膏ボードを4枚使用することで基準を満たすことができます。

防火区画のその他の規定

防火区画を貫通する管やダクトがある場合、貫通する部分の周囲を不燃材料で埋め、
貫通部分の前後1mは不燃材料の管等を使用しなければなりません。

まとめ

防煙区画と防火区画は全く異なる。
防煙区画は煙の拡散を防ぎ、煙を排出する排煙設備とセットで機能する。
ガラスの防煙垂れ壁等が主な例。
防火区画は火の燃え広がりを一定の区画でおさえるため、
ゴツいコンクリやLGS+PB壁や防火戸で形成される。

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