現場で、
・先輩社員「搬入するから床と壁“ようじょう”して!」
・左官職長「そこの土間の“ようじょう”期間が1週間くらいだよ。」
・職方「“ようじょう”テープある?」
・私「ヨウジョウ??」
養生とは?
養生とは、Goo辞書によると、以下の事のようです。
1 生活に留意して健康の増進を図ること。摂生 (せっせい) 。「酒やタバコをひかえ、つね日頃から—している」
2 病気の回復につとめること。保養。「転地して—する」
3 打ち込んだコンクリートやモルタルが十分に硬化するように、低温・乾燥・衝撃などから保護する作業。
4 家具の運搬や塗装作業などの際に、運搬物や周囲の汚損を防ぐために布や板などで保護すること。「—シート」
引用元:Goo辞書「養生」
工事現場で使われる“養生”とは、この3と4です。そして本記事で取り上げる“養生”は4です。
養生の道具
養生は目的によって、方法と資材を選定しなければなりません。
一般作業の汚れ程度
よほど細かい粉末や液体ではなければ、ブルーシートが安価で加工しやすく使いやすいです。
重量物
台車で運ぶのであれば、車輪の箇所が陥没する恐れがあります。厚みが潰れずに荷重分散する資材を選定します。ベニヤ板が扱いやすいです。コンパネ12mmであれば大抵の資機材はカバーできますが、養生材そのものの運搬や設置作業も大変なので、簡易で良ければ、3mmの薄いベニヤや青ベニヤでも良いでしょう。
鋭利な資材
打痕や切り傷にならないように表面は固く、保護対象側はクッション性のあるものを使用しましょう。スタイロベニヤが便利です。
液体、塗装
液体を透過させないシート系を使用します。ブルーシートは透過しますので注意が必要です。壁面等の歩かない部分は養生ポリシートかテープとシートが一体になったマスカーが便利です。マスカーのテープは粘着力が強いので接着面は注意してください。歩く必要がある床面は歩けるタイプのビニールシートを選定しましょう。
火気
軽い火花程度で広い面を塞ぐのであればあれば防炎シートが良いです。溶接や密度の高い火花がでるのであれば防炎布を部分的に使用しましょう。
粉塵、臭気
周囲に漏らしていけない環境の場合、ビニールシートで作業場を密閉する必要があります。ビニールシートと送風機を用意して、送風機で排出して良い場所に排気しましょう。
その他
・毛布:木造作、家具工事の際に便利です。大工や家具屋が良く持っています。
・ダンボール:工事には脆弱すぎるため不向きですが、仕上げ材の仮置き等には便利です。
・養生テープ:粘着の弱いガムテープのようなものです。かなり多用途なのでご自宅にも。
・マスキングテープ:幅と粘着の強さでいろいろ種類があります。特に塗装壁に貼る場合は弱粘を選定してください。
・パンチカーペット:イベント等でも好まれますが、簡易作業の汚れや傷から床を保護する場合に重宝します。
概ねこのようなところですが、工事内容によっては組み合わせる必要もありますし、加工性やコストの判断も必要になります。例えば、防炎シートはブルーシートと比較して、生地が厚く、丈夫で、透過性もないため、火気だけでなく、汚損養生にも好まれますが、コストは高く、思いため、設置作業が大変だったりします。
養生が必要な時と場所
内装工事で養生が必要になるシチュエーションの具体的な例と写真を紹介します。
資機材の搬入時にその通路やELVを保護
資材を運ぶ時は台車を使用する事が多いです。台車を転がす際に、床にタイヤ痕がついてしまったり、壁にぶつけて傷つけてしまう場合があります。そうなるとその施設から、補修費用を要求されてしまう場合があります。そのため必ず養生をしましょう。施設やその状況によって、一部ビル側で養生をしてる場合や、バックヤードであれば養生しなくて良い場合もあるので、事前にビル管理者に確認しましょう。養生の程度については、搬入物の物量や大きさ、重量によって適切に判断しないといけません。それほど重いものや大きなものがなければ、ロールタイプのブルーシートを敷いて終わりですが、例えば、LGSやPB等の重量物や長物がある場合は、床をシート+青ベニヤで養生し、壁に傷つけないように、プラベニを貼りましょう。たまにプラベニを床に敷いている現場も見かけますが、滑るし、潰れるのでおすすめできません。
工事関係者で使用する共用トイレ
施設のトイレを「養生すれば使用可能」という条件が出る場合があります。内装工事関連の方だと、トイレ養生に慣れていない場合があります。写真を参考にして下さい。



オフィステナント工事の床
オフィス入居工事の際に、床のタイルカーペットを養生します。しないと、天井や壁のボード系作業や木工事などで汚れてしまい、掃除機では吸いきれなくなってしまいます。掃除より、養生の方が圧倒的に楽です。ブラスターボード工事がある場合は、2点要注意です。1点目は、プラスターボード工事完了後に、養生撤去&再養生する事も選択肢に入れて下さい。養生が粉だらけになるためです。2点目は出入口に足拭きマットや雑巾を置いて下さい。ボードの粉を共用廊下に引っ張って行かれないようにです。

塗装
塗装の際はパテの粉と塗料で床が汚れる可能性があります。塗装養生は多くの場合、塗装屋さんがしてくれますので、頼みましょう。全体仮設で養生してあっても、その上からしてくれます。
PB +LGS、天井や間仕切りの解体
PB加工場を設ける場は最低でも防炎シートを敷いて下さい。できればその上にベニヤ材まで敷きます。大量の粉末が出ますし、重量物を扱うので、ブルーシートでは粉末が多少透過してしまいますし、強度も心許ないです。またベニヤだと粉が多少滑りにくくなるし、シートみたいに寄れないので、ボードを担ぐ職方も作業しやすいです。LGS加工がある場合は、ベニヤから離して、防炎シートと防炎布を使用して火花が保護対象に当たらないようにして下さい。

粉塵作業
内装工事現場の粉塵作業とえば、セメント現場練りとコーリアン研磨です。粒子が細かく舞いまくります。カーテン養生をするのが良いです。


ガラス
養生とともに目印となるテープを貼ります。養生した場合はその面がガラス(または鏡)であることを明示します。養生する事で作業員が油断して台車等を平気でぶつけたりします。養生してもガラスだと衝撃で割れてしまいます。また、養生とは異なりますが、透明ガラスを設置した場合はマスキングテープ等を斜めやバッテンに貼りましょう。意外とガラスに気づかずに通ろうとしてぶつかる人がいます。私も一度だけ、顔からぶつけて瞼が軽く切れた事があります。(昨日まではそこにガラスが無かったんです笑)ガラスが割れなくて良かったです。
雑記
火気養生は本当に注意して下さい。私の小火騒ぎの経験をお話します。
ある2階立ての既存ビルの改修工事です。現場は内装解体済みのスケルトンの現場です。中には可燃物はほぼなく、ちょっとした金物用の小物入れダンボールが数箱ありました。2階でアーク溶接を行うので、ダンボールやちょっとした可燃物に防炎シートや余りのプラスターボードを立てかけて、火花がかからないようにしました。しかし、アーク溶接の際の溶接棒が溶けたあのコロコロ、、養生の隙間を縫って転がって、ダンボールの中に入り込んだようです。しかもすぐに着火するのでなく、溶接作業も終わり、数十分後の休憩時間になって、某職人が「燃えてるよー!」と、大きな声が。繰り返しですが、スケルトンですし、小さなダンボールが燃えただけなので消火器で鎮火して、大事には至りませんでした。やつらは時間がたってから燃え始める事もありますので、1~2時間の残火確認も必要です。某都内百貨店では天井裏の溶接作業の終了後、しばらくしてから天井裏の埃に燃え広がり、本当の火災事故になったこともあったようです。
まとめ
養生はちょっとオーバーにやるくらいで丁度良いです。「養生にやりすぎは無い」という格言もあったような気がします。適切な材の選定と方法、作業時間の見込み、コスト、これらの算出をさっとできるレベルになるにはそれなりに経験を要します。「たかが養生、されど養生」です。