最近はどの業界もコンプラ意識が高くなってきましたが、まだまだ内装監理関連、特に主に現場の方々は建築関連の法規に関する理解が薄いように思います。社内に「安全管理部」等があると安心ですが、現場担当はよくわからないまま、資格だけ取ってたり、書類だけ作ったりしますよね。ですので、これだけでも早めにイメージだけでも掴んでおくと、後々の正確な理解が早くなったり、役に立つであろう情報を整理しました。あえて細かい数字は割愛しており、わかりにくい法律的な言い回しは、なるべく誤解を招かない程度に平易にしています。もっと詳細正確に知りたい方は書籍や国交省のサイトを見てください。(この記事を読んでから行くとハードルが下がっているはず、、、です!)
建設業法の概要イメージ
建設会社が関係会社と適切な関係で受発注を行い、品質と安全を守って工事を行えるように国交省が整備した法律です。逆に言えばそれだけ不適切な受発注と危険な現場が過去にたくさんあったという事ですし、まだまだ表面化してない問題もあるので、適宜更新されている法律です。違反すれば免停や刑事罰もあり得ます。大枠のイメージとして、建築基準法が「設計」のための法律で、建設業法は「工事」のための法律だと理解すれば良いと思います。
建設業法の目的
・建設業者の資質向上
・建設工事請負契約の適正化
この2点を目的に法が構築されています。当サイトでは大きく以下の4つに大分類して解説します。
①建設業の許可制
②建設工事の請負契約に関する規制
③主任技術者・監理技術者の設置
④施工体制台帳の作成義務
①建設業の許可制
建設業を営もうとする者は、国交省か都道府県の許可が必要ですよ、許可をとるには相応の経験者の在籍と適切な保険加入が必要ですよ。という事です。ただし、小規模工事に限って受注する場合には、例外的に許可不要とされており、金額と規模で規定されています。(請負代金500万円以下とかなので、一般的な建設工事会社であれば許可必須です。)
※建設業の定義
「建設業」とは、元請・下請などいかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいいます。建設業の許可は、以下のとおり工種ごとに細分化されており、対応する許可を取得しなければなりません。私がこのブログで定義している内装工事は“建築(一式)工事”に該当します。似た言葉で“内装仕上工事”がありますが、これはいわゆる表装仕上工事のみなので不十分です。いずれも5年ごとの更新が必要です。
・土木工事業
・建築工事業
・大工工事業
・左官工事業
・とび、土工、工事業
・石工事業
・電気工事業
・管工事業
・タイル、れんが、ブロック工事業
・ガラス工事業
・塗装工事業
・防水工事業
・内装仕上工事業
など、全29種
一般建設業と特定建設業
建設業は、下請契約の有無およびその金額に応じて「一般建設業」と「特定建設業」の2種類に大別されます。
・一般建設業
下記の“特定建設業”以外、全部です。
・特定建設業
請け負う1件の建設工事において、その工事の全部または一部を下請代金4500万円以上(建設工事業の場合は7000万円以上)で、発注して施工する工事業です。特定建設業の許可を受ければ、一般建設業・特定建設業の両方を行うことができます。つまり、「一般建設業」しかない場合、内装工事等の“建設工事業”を7000万円以上発注する工事を請け負う事ができない、という事になります。
②建設工事の請負契約に関する規制
後々揉めないように、健全な関係を保って、適切な契約をしてくださいね、という事が定められています。契約書には金額や工期等の必須項目を記載してね、不当な工期や金額の契約はダメですよ、丸投げもダメですよ、などなどです。たくさんありますが代表的なのは、以下のルール等です。
・建設工事の請負契約に定めるべき内容
・注文者の禁止行為
・建設工事の見積り等
・一括下請負の禁止
・元請負人の義務
建設工事の請負契約に定めるべき内容
建設工事の請負契約では、以下の事項を定めなければなりません。(ちなみに宅地建物取引業等でも契約書に記載必須の事項は定められています。)
・工事内容
・ 請負代金の額
・ 工事着手の時期・工事完成の時期
など15項目
注文者の禁止行為
以下の行為が禁止されています。請負者を守るためですね。
・不当に低い請負代金
・不当な使用資材等の購入強制
・著しく短い工期
建設工事の見積り等
建設業者は、建設工事請負契約を締結するに当たり、工種毎の内訳、工事工程日数を明らかにして、請負契約の締結前に見積書を交付することが必要です。
一括下請負の禁止
丸投げはいけません。つまり請け負った建設工事を、一括で他人に請け負わせることは禁止されています。施工と責任を押し付けて、マージンだけはねるような人達は許しませんよ、という事ですが、現代でもいるんでしょうかね。私が若かりし頃はいましたね、全部こちらにお任せで、売値の5-10%持ってく個人事業主のおじさん達が。。。(ある意味マッチングビジネスですかね。)
元請負人の義務
元請負人には、以下の事項等が義務付けられています。※法律用語のわかりにくいところで、元請負人=元請業者、ではないのです。下請けに発注する業者はみんな元請負人です。なので、商流上、末端の業者以外は全員、元請負人です。
・施工に関する事項を定める際、あらかじめ下請負人の意見を聴きなさい。
・請負代金貰ったら、早めに下請けに払いなさい。
・施工完了したら、早めに検査完了しなさい。検査しないで支払いを延ばすようなことはやめなさい。
・発注者は早めに建設工事の目的物の引渡しを受けなさい。
・違反行為を通報をしたことを理由として、下請負人に対し不利益な取り扱いはやめなさい。 (チクったからイジメる、ような事はダメです。)
などなどです。
③主任技術者・監理技術者の設置
一定程度の規模の工事現場には適切に技術者を配置して、現場の安全と品質を守りなさい。建設業者としてキャパ以上に工事を受注してはダメですよ、という事です。
主任技術者を置くべき場合
建設業者が請け負った建築工事を施工するときは、主任技術者を置かなければなりません。
監理技術者を置くべき場合
監理技術者も主任技術者と同様、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる担当者です。発注者から直接建築工事を請け負った特定建設業者は、下請代金が4500万円以上(建築一式工事の場合は7000万円以上)になるときは、監理技術者を置かなければなりません。
・主任技術者:施工計画の作成、工程・品質管理、指導などの適正な工事施工の確保を行う
・監理技術者:主任技術者の役割に加えて、下請負人の調整や総括的指導を行う
※詳しくは⇒【簡単に解説】施工管理者の名称。
現場専任制
公共工事などのうち、請負代金額が4000万円以上(建築一式工事の場合は8000万円以上)の現場については、工事現場ごとに主任技術者と監理技術者を専任で設置しなければなりません。ただし、監理技術者“補佐”を工事現場ごとに専任で設置すれば、監理技術者は2つの工事現場まで兼務できます。そもそも“専任”の意味が曖昧になりがちですが、「他の工事現場と“兼任”できない」という事であり、「現場に常駐」までは求められていません。ただ、現場離れるには管理体制を整えて関係者に確認してね、という事ではあります。
④施工体制台帳の作成義務
「台帳」と聞いただけで拒絶反応するのは私だけでないと思います。(笑)「大事な事が記載されている書類」くらいに理解ください。
そもそも施工体制台帳とは?
作成目的は、「施工上の安全と品質の担保、工期の遅延や一括下請負などの建設業法違反の防止」です。元請け業者が作成することで体制を構築、管理することができ、また、発注者に提示することで、その証明になる、という事です。ですので、工事に携わるすべての会社の情報とそれぞれの施工範囲、技術者の氏名などを記載する必要があります。「グリーンファイル」とも呼ばれますね。安全=緑=緑のファイルに閉じられる事が多い、からです。
作成が必要な条件
・民間工事:下請代金の額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)
・公共工事:下請けに発注する場合は金額に依らず全て。さらに発注者に要提出。
余談
グリーンファイル作成はとっても大変です。初めて作成を依頼されたときは、まだPC普及もいまいちで「手書き&FAX」でした。しかも一次下請けで、かつ、かなりの分離発注をしていましたので、書類も大量です。「再下請負通知書」とか「???」となりましたよ。今なら作成方法も意味も理解しますが、「証明」て大変ですよね。。。
建設業法に違反した場合の罰則(ペナルティ)
建設業法に違反した場合、違反内容により、以下の罰則の対象となります。個人の人生と企業の維持に関わるレベルです。納品物が「建築物」ですから、利用者の生命に関わりますので、罰則が重くなるのも想像に難くないですね。
・ 国土交通大臣、都道府県知事による指示、営業停止処分
・ 建設業者の許可取り消し
・ 刑事罰(罰金、懲役等)
以上、内装監理関係の人もこれくらいは知っておこうレベルで解説しました。安全管理や法令に比重の高い業務を行う人はもっと詳しく学んで下さいね。