避難安全検証法とあらかじめの検討について解説します。が、新築の設計者向けではありません。「テナント入居工事」に関わるC設計者、PM(プロジェクトマネジメント)、内装監理室の方向けです。ですので、
・なんで入居工事の計画でこんなややこしいことしないといけないの?
・費用かかるけどクライアントにどう説明しよう?
・A(B)工事設計者にいろいろ説明されたけど何いってるかわかりません。
・入居テナントに対し、なぜ必要か、お金がかかるか説明したいけど、よくわかりません。
な方々にざっくり理解頂くことが目的です。(本職の方々は防災コンサル等のHPを見てくださいまし。)
避難安全検証法とは?
まずは建物を建てる際の目線です。建築の設計者はその建物の利用者のためにあらゆる機能を担保しなければいけません。そのうちのひとつに「火事の際に避難できる時間を確保」する必要があります。しかも火事で危険なのは“火炎”よりも“煙”なので、特定の場所まで避難するまで煙から逃げられる計画になっている必要があるわけです。(燃えにくい材料とか煙が滞留できるスペースとか避難のための移動距離とか)平成12年6月の建築基準法の改正に伴い、建築物の避難安全に関して従来の“仕様規定”に加えて新たに“性能規定”が導入されましたが、その性能規定の手法の一つが「避難安全検証法」です。
ルートA/ルートB/ルートC
一通りの確認方法だと、デザイン性が全くない建物だらけになったり、必要な機能が担保されているにも関わらず、必要以上に余計な仕上材コストやスペースを無駄にすることになってしまうため、その建物の用途や特性に応じられるように検証方法の選択肢があります。
ルートA:仕様規定:通常の確認申請
標準的な条件における災害時の行動を想定した「避難規定の仕様基準」に適合
ルートB:性能規定:通常の確認申請
告示で定められた「避難安全検証法」を用いて、避難時間の検証を行う
ルートC:性能規定:大臣認定(特殊)
告示によらない「避難安全検証法」を用いて、避難時間の検証を行う。
あらかじめの検証とは?
建物計画でプラン変更が行われる場合にそなえ、当該部分の避難安全検証が成立するよう、室用途、通路幅、扉の性能、内装の種別、通路の見通し距離や天井高さなどの条件をあらかじめルール化しておく検証法です。通常、ルートB、ルートCを適用した建物の平面プランを変更するには、行政又は民間の確認審査機関に、変更した旨を届出る必要があり、ルートCの場合は大臣認定取り直しとなります。但し、あらかじめ検証により大臣認定を取得していれば、その手続きを省略することが可能です。つまりテナントが入居する際に、本来入居の都度、確認申請をおこならなければならないが、大臣認定の取得をしたあらかじめ検証のルール内でテナント設計を行えば、確認申請が不要になる、という事になります。
※備考
あらかじめ検証は、避難安全検証だけでなく、構造安全性検証と耐火性能検証においても、認定と性能評価方法があり、避難安全検証法と同様に認定規定内の変更であれば新たな確認申請は不要となります。
ルートCをもう少し詳しく
独自な検証・予測手法など、高度な専門知識を用いて避難安全性能の確認を行います。そのため、ルートBでは成立しない室条件でも成立する可能性が高くなります。詳細な煙性状シミュレーションにより、より自由度の高い空間計画が可能となります。また、防災計画の専門家の審査員に評価を頂くため、防災計画上の信頼性は極めて高くなり、防災性能の評価を大臣が認めているため、国外の顧客に対するテナントリーシングなどで、有利に働く可能性も高くなります。
メリット
・排煙装置免除や防煙垂壁軽減、避難階段の軽減といった設備投資の軽減。
・床面積効率およびレイアウト自由度の向上。
・大臣認定を取得したルールを用いるため、再度審査せずに成立の確認が可能で、容易に変更したプランの確認が可能となる。
デメリット
・あらかじめ検証の設計ルールは、変更した間仕切りによる大事認定の審査を省くため、多くの安全率を見込まなければならず、内装設計ルールが厳しくなる。
テナント及びその基本設計者にとって
ここで注意すべきなのが「性能規定」を導入したビルに入居するテナント側です。実は、ステイタスやレイアウトの自由度が向上する反面、入居前から緻密なレイアウト検証が求められるため、手間・コスト負担に加えて入居までに思わぬ検証時間の確保が必要となることがあります。つまり、従来と比較してビル選定時から、スケジュール管理やオフィス計画に細心の配慮が必要となります。検証時間確保のため、設計行為(間仕切計画)の前倒しや、移転で実現・改善したい点を吟味する時間が不足する恐れがあります。したがって、テナント側はオフィス設計思考やニーズに応じて、最適な入居ビルを慎重に判断することが重要とも言えます。A工事設計者にB工事の実施設計を担当頂きつつ、あらかじめの確認やアドバイスをしてもらうのがセオリーと言える。
まとめ
・避難安全検証法によるあらかじめの検討は、ビル新築時に安全を担保するための設計手法として、設計者が何を採用したかにより、必要となる。
・テナント設計者はそのルールに準じる必要がある。
・ルートCのあらかじめ検討はルールが複雑で難易度が高い傾向にある。
・認定ルール内で設計すれば確認申請をする必要がない。
・C設計者にとっても、内装監理室にとってもA設計者と良好な関係を気付き、テナント設計に協力を得る必要がある。
※免責事項
本記事は避難安全検証法に関する全てについてを正確に説明したものではなく、初心者の方にイメージを掴んでいただくために作りました。そのため、言い回しなども簡略化しており、正式な言葉の定義と異なる場合もあります。この内容について、いかなる責任も負うものではありません。