【簡単に解説】内装施工管理の電気工事(後編)

後編ではさらにに内装管理関係者が理解しておくべき点と関連用語について焦点を絞ります。

前編は⇒【簡単に解説】内装施工管理の電気工事(前編)

オフィスや店舗のテナントで電気工事(照明やコンセント設置)を行おうとすると、電気屋さんが分電盤図や現地の分電盤を調べたりしますよね?ちょっと電気設備をかじった方ならわかる事ですが、電気設備の経験がないと、そもそも何を調べているかすらわからないと思います。分電盤みたい?盤図??そんな方向けの説明と予備知識を記します。

分電盤の機能

大型の施設で、多くの場合、ひとつのテナントに対し、分電盤が一つ、または複数割合られています。(新築ビルの店舗だと分電盤をテナント工事でつける事もあります。)分電盤の主な機能としては「幹線で引き込まれた電気を分配する」、というものですが、当然にに決められた最大容量というものがあります。電気使用中にその盤の最大容量を超えないように付いているのが親ブレーカーです。そして使いやすいように分配されたものを回路と呼びますが、そのそれぞれの回路毎に容量が超えないようについているのが子ブレーカーです。家庭用の分電盤も同じ構造ですので、見てみて下さい。

電気回路

電気回路とは電気の通り道を指しますが、前述の分電盤で使いやすく回路をわけてコンセントや照明に電気を供給します。親ブレーカーの容量は計画次第ですが、子ブレーカー容量はほぼ全て、20Aです。後でもう少し解説しますが、一般的な電気機器はほぼ100Vですから、2000wを超えるとブレーカーが落ちるということになります。近くのコンセントで電子レンジとポットを同時に使うとブレーカーが落ちるのはそういう事です。

一般的な家電の消費電力

一般的な電気製品の消費電力W(ワット)を紹介します。
・エアコン(10畳用):冷房580W(立ち上がり時1400W)
・エアコン(10畳用):暖房660W(立ち上がり時2000W)
・電気ストーブ:500~1000W
・冷蔵庫 (450ℓ):250W
・IHジャー炊飯器:1300W
・電子レンジ(30L):500W~1500W
・電気ポット :700W~900W
・テレビ(42型)液晶:210W
・照明器具(1基) LED:10W
・蛍光灯:40W
・白熱電球:60W
・掃除機:200W~1000W
・アイロン:1200W~1400W
・デスクトップPC:50W~150W
・ノートPC:20W~30W
・ドライヤー 1200W

電流A(アンペア)と電圧V(ボルト)と電力量W(ワット)と皮相電力VA(ボルトアンペア)

「電流と電圧とは?電力量、皮相電力とは?」はここでは解説しません。わかりやすい解説がサイトでも動画でたくさんありますので、学びたい方はそちらで見てください。まず内装関連の人が知っておくべき電圧は、分電盤から供給される電圧はほぼ100Vであること、たまに200Vが登場するという事です。
そして「100Vの電気で1500W(VA)の電子レンジを動かしたら15Aの電流が流れる」という理解をして下さい。そうすると回路は20A以上で落ちますから、電子レンジとアイロン1400W(14A)を同時に同じコンセントで使用すれば、落ちるのは明白ですね。家庭で電気ストーブつけて冷蔵庫つけて電子レンジとドライヤーを同時につければ親ブレーカーが40Aであれば落ちますね。(10+2.5+15+14=41.5A>40A)また2000Wのエアコンをつけるとき100V電源であれば20A流れますが、200V電源であれば10Aで済む、という見方もできます。なのでこういったものは回路を分けて配電計画がされています。なおWとVAはほぼ同じという理解で困る事はありません。(専門家でなければ。)

まとめると、以下の通りです。
・一般コンセントはだいだい100V。エアコンなどの大き目の電化製品でたまに200V用もある。
・一回路(末端ブレーカー一個)は20A以上で落ちる。
・W(ワット)≒VA(ボルトアンペア)
・電子レンジ(を動かすため)の消費電力はだいだい1500W。つまり、100Vで15Aの電流が流れる。
 (1500W≒1500VA=100V×15A)
・そのため電子レンジと他の大きい家電を同時使用するとブレーカーが落ちる事が良くある。

室の用途別の電灯コンセントの容量目安

だいたいのテナントや施設の面積あたりの電気容量の計画値です。
・オフィス :30~40VA/㎡
・店舗 :60~70VA/㎡
・ホテル :30~40VA/㎡
・住宅 :50~60VA/㎡
・学校 :20~30VA/㎡
・病院 :40~60VA/㎡

もちろん例外もあり、例えばゲーム開発会社等のハイスペックPCを大量に使用する会社ですと、100W~200W/㎡必要とするオフィスもあります。

知っておくべき単語

EPS(Electric Pipe Shaft)

ビルの垂直方向に突き抜けているシャフトです。ビルに供給された電気を各フロアに間配りするために各フロアを突き抜けています。各フロアに分電盤を配置して、各室に分配しています。

Fケーブル(Flat Cable)

Fケーブルとは、屋内配線や冷暖房用配線など、の電子機器への給電に用いられる低圧向け電力ケーブルです。銅の心線(芯線)を絶縁体である塩化ビニルで被覆し、2~4本まとめたものをさらに塩化ビニルで被覆されています。厳密にはVVFケーブルと呼ばれる規格のケーブルです。(Vinyl insulated Vinyl sheathed Flat-type cable)

ハーネス(ハーネスジョイントボックス)

フリーアクセスフロア(OAフロア)に適した電線のジョイントボックスです。FケーブルとOAタップ(ハーネス用)をジョイントできますので、分電盤から床下ハーネスまで電気を供給しておけば、OAタップをハーネスに差し込むだけで電気が供給できますし、オフィスレイアウト変更の際のコンセント位置変更も簡単に対応できます。

OAタップ

オフィスでよく使われる延長コード。パソコンやプリンターなど、複数の機器に電源を供給するために使います。

OAフロア

床スラブの上にネットワーク配線などのための一定の高さの空間をとり、その上の別の床を設け二重化したものである。フリーアクセスフロア、二重床、あるいは俗に床上げなどとも言います。

区画貫通(くかくかんつう)

Fケーブル等が防火区画の壁や床を貫通すること。貫通部には「防火処理」をする必要があります。
防火区画⇒【簡単に解説】防火区画の貫通処理の方法

AC回路とGC回路

AC回路は、 コンセントを差す 電源(商用電源)からの電気回路、GC回路は発電機(非常用電源)からの電気回路です。つまりACは通常時の回路でGC回路は停電時に使用する回路でいわゆる災害時用です。

UPS(Uninterruptible Power Supply、無停電電源装置)

停電や瞬時電圧低下など、商用電源における電源障害が発生した場合にも蓄電しておいたエネルギーを使って、重要設備に安定した電力を供給し続ける電源装置です。データ設備保護、公共性の高い放送、病院の医療などの電源として多く用いられています。

絶縁抵抗測定(ぜつえんていこうそくてい)

電気が不要なところに流れないようにするための絶縁体の機能(=抵抗)を測定すること。規定値より低いと漏電が発生し、火災や関電事故につながる。

あとがき

私が内装管理を始めたころにとまどった電気工事に関連することをまとめていました。ひとまずこの程度の概要がわかれば電気工事会社とも会話になり、困る事も少なくなるのではないかと思います。もちろん掘り下げたり、広げる必要はありますがスタート地点に立つための役立って頂けますと幸いです。

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