内装監理室について語りたいと思います。ビルオーナーに向けたプロモーションとしての解説や説明はありますが、実務者向けには見当たらなかったので、綴ってみたいと思います。以下の方に読んでいただくと役にたつと思います。
・内装監理室で業務する人
・内装監理室がある施設で設計及び工事を行う人
・内装監理室を委託したい人
内装監理室とは?
大型施設のテナント入居の際に、事業者の代行機関として、内装設計者、内装施工者に対して通知、指導、調整、確認等を行ない、それぞれの計画を滞りなく推進させ、無事に開業させることが業務内容です。主たる対象は大型施設のテナント「オフィス」「商業」です。
内装監理室の立ち位置と役割
登場人物としては大きく「ビル側」と「テナント側」にかわれますが、内装監理室は「ビル側」に立って、「テナント側」の調整を行う立ち位置になります。基本、「ビル側オーナー(事業主)」から受注して業務を行いますので、クライアントはビルオーナーになりますが、テナントから費用を貰う場合もありますので、優先順位を混乱させないように注意する必要があります。最大のプライオリティは「ビル(施設)という不動産資産を守る事」です。ほぼ同位置に「テナントを無事に開業させること」もあります。
内装監理室はなぜ必要か?
テナント入居する際は店舗でもオフィスでも必ず「設計」と「施工」が発生します。ビル新築時には必ず法的なルールが定められていますし、特に商業の場合はデザインコンセプトが定められている場合があります。またどこまでがビル側の工事範囲でどこからがテナント側の工事範囲で、資産区分も明確にしておく必要があります。テナント側の設計者及び施工者はこれらを理解せずに自由に設計や施工をすることはできません。仮にしてしまうと以下のような事が発生します。
・デザイン調和がない
・違法な設計になっている
・設備が機能しない
・ビルの重要な躯体に勝手に穴をあけてしまう
等々。これではビルオーナーもテナント困りますので内装監理室がこれらを統括するということになります。
内装監理室の業務概要
以上を踏まえると下記のような業務が内装監理室では行われます。(ビルオーナーとの取り決めにより多少異なります。)
内装設計指針書作成
・ABC工事区分表の検討調整
・全体スケジュール調整とプロセス検討
・各関係者の業務区分調整
・諸官庁への事前協議または協議補助
・デザイン規制の検討
・建築及び設備の設計条件調整
設計説明会の開催
・各テナント白図のとりまとめ
・各テナント設備容量のとりまとめ
・説明会用資料作成
・図面の検討把握
・各種法規の検討把握
施工説明会の開催
・施工指針書の作成
・提出書類のひな形作成
・提出図書の条件整理
・個別負担金の設定
現場監理
・AB工事引渡立会
・BC工事間の調整
・試運転調整
・諸官庁検査の日程調整と立会
・C工事内容のチェックと指導事項の改善指示
・テナント内装図面受付・返却
・テナントデザインの審査
・設計指針に基づく審査・指導・調整
・建築及び設備との図面調整
・各テナント間の指導調整
工事完了手続き・竣工資料作成および収集
・工事完了引渡取扱説明
・竣工図書収集
・竣工報告資料の作成
・運営管理者への引き継ぎ
内装監理室業務の注意事項
設計説明会時
テナント側の体制を明確に把握する
PM会社、C設計会社、C施工会社が基本ですが、PM無しだったり、PMと設計が兼務だったりします。仲介がPMを請ける場合もありますが、本業仲介でついでにPMみたいな会社は要注意です。まともなマネジメントを行わない場合があります。昔よりはPMの重要度が認知されて、その傾向は少なくなりつつはあります。
ビル側の体制と役割を明確に伝える
内装監理室の担当者とB設計、B施工の担当、役割を明確にしましょう。特にプロジェクト推進やB工事の金額調整まで全部内監がやってくれると勘違いされると危険です。(実際にそこまでやる場合は良いです)しっかりとPMマターでハンドリングしなければならないことを伝えて下さい。
B工事会社の必要なスケジュールをしっかり伝える
B実施設計、B工事見積、B工事契約後に着工までどのくらいかかるか等、事前にB工事会社と握っておいて、説明しましょう。PM会社やテナント担当者の経験則でマスタースケジュールを組まれてしまうとギャップが生じます。特に昨今は「国交省による建設業の働き方改革」「設備系資機材の納期長期化」により、従来よりもスケジュールが長期化する傾向にあります。一昔前の感覚で「これくらいなら◯ヶ月でできるだろう」と思われるより、1.5~2.0倍くらいかかることも多いので、最初に現実を伝えていく必要があります。
基本設計に必要な要素をしっかり伝える
実施設計や規程違反チェックするために必要な図書のガイドラインを準備しておきましょう。特にC設計者にありがちなのは、「設備設計が弱い」または「設備設計を自分達の仕事だと思ってない」です。デザインや表面的な機能はきっちりクライアントと握りますが、電気設計はある程度行ったとしても、空調設計、給排水設計、防災設備設計はB設計に頼りがちです。頼る事が悪いことではないのですが、C設計の仕事であり責任が発生することを認識させ、与件を整理して、最低限の機能やプロットをして貰う必要があります。基本設計完了時に情報が不足し、実施設計に支障をきたし、スケジュールが遅延して内監のせいにするとか、そんなのB設計の仕事だと思ってたとか、云々となります。実際にテナントと相対するのはC設計者なので、与件整理から基本設計まで行えるのはC設計者なのですが、何の情報もなくB設計者ができるとでも思っているのか、と言いたくなる場合すらあります。逆にあなたがテナント側PMやC設計の立場でしたら、最初から設備設計を見込んでおく必要があり、予算組みの段階で漏らしてしまうと、設備設計予算を後から捻出するのが無理になったり、上記理由からスケジュールが遅れて、「基本設計時に図書が不足していた」事を理由にオープンが遅れることになるやもなので、その施設の正しい理解をして必要説明をテナントに行い、予算及びスケジュールの確保に努めましょう。それが簡単でないのもPMやC設計者の辛いところではあるのですけどね。。。
施工説明会
ビル側への申請
目的、用途、いつまでに誰にどのように提出するか、雛形とともにきちんと渡しましょう。形骸化している書類はお互い無駄な作業になるので見直しも重要です。
消防署などの諸官庁申請
ビル側で提出するもの、テナント側で提出するものを明確に伝えましょう。必要に応じて所管消防と事前に確認しましょう。
火気作業時のルール
消防に「工事中の消防計画届出」に準じた上で、ビル側のルールを決めて、徹底させてください。特に「残火確認」の時間と開始前、開始後の手順をしっかり伝えて、ビル管理側とも連携して下さい。
養生ルール
ビル側で行う養生とテナント側で行う養生を明確にして下さい。複数テナントが使う共用部やエレベーターはビル側で行う方が効率もよく、テナント側も納得します。
搬出入時のルール
搬出入車両の出入り口、利用可能時間、駐車場併設の場合は有料無料などを整理しておいて伝えます。
工程表、体制表、非常時の体制や初動
現場でいつ何が誰によって行われていて、事故が起きた際に連携取れるようにします。
あとがき
もちろん他にもたくさんあります。お互い目指すは開業なのですが、向いてる先が違うため衝突せざるをえない事も多いです。相互理解しながら、スケジュールとコストの折り合いさえつけば、協力体制で進められるはずです。主に内監目線で記載しましたが、テナント側のPM会社、設計、施工の方々にも参考になれば幸いです。