施工管理の就職や転職で採用情報を探していると「“建築”と“内装”の違い」が良くわからない方も多くいると思います。そのような方のために「業界」や「業務内容」について解説したいと思います。
建築と内装の対象の違い
建築施工管理
建物全体の設計・構造・施工を管理する分野で、基礎工事、構造体の建設、外装、屋根などが主な対象。住宅、ビル、商業施設、工場など、あらゆる建物の新築や改修に関わる。
内装施工管理
建物内部の仕上げや装飾に焦点を当てる分野で、壁、床、天井、設備、家具、照明、配線などを取り扱う。建物完成後、リフォームやテナントの入退去時に関わることが多い。
補足1
“建築”には“内装”も含まれますが、多くの場合“内装施工管理”程に細かく、現場の管理をしない事が多いです。サブコンや下請けの協力会社に任せることが一般的です。逆に内装施工会社が建築施工会社から仕事を受注して内装工事全般を請け負う事もあります。
(例)オフィスとホテルの複合施設をゼネコンが元請で受注して、基礎から建物を建てて、ホテルの内装は凝った意匠が多いので、そのゼネコンから内装工事が得意な会社に一括で発注する等。
補足2
「内装」という言葉もよく誤解を招きやすいのですが、「躯体以降の全工事(軽鉄工事、設備工事、家具工事等を含む全ての仕上工事)」の場合と「内装仕上げ工事(クロス、塗装、床貼り等)」の場合があるので、どこまでを対象としているのか要注意です。本ブログでは前者で説明しています。
※(例)軽鉄とは→【内装施工管理】軽鉄工事の管理。
職種概要
建築施工管理
建築物全体の工事計画・管理を担い、設計者、施主、職人、業者との調整役となる。プロジェクト全体の予算やスケジュールの管理が主な役割。
内装施工管理
内部空間の設計や装飾に関する工事の管理を行う。特にテナント工事やリフォームでは、クライアントの要望に沿った設計や空間デザインの実現が求められる。
補足
他にも電気施工管理や設備(空調衛生防災)施工管理等、インフラ系に特化した施工管理もあります。また、個別具体的な職種(床仕上工事管理や家具工事管理等)もあります。
業界(採用企業など)
建築施工管理
ゼネコン、建設会社、住宅系の工務店などが主体です。オフィスビルや工場、住宅、大型商業施設等、あらゆる建物が対象です。また、大手グループ企業では、子会社として建設会社を抱えている事もあり、その場合はそのグループ会社の関連施設を受注して工事している場合も多いです。
(例)大手メーカーのグループ建設会社として工場の新築、改装、維持管理等を中心に請け負う。
(例)大手不動産が開発する新築ビルや改築等を中心に請け負う。
内装施工管理
オフィス、物販、飲食、ホテル、病院、美容院など、特定の用途に特化した内装施工会社が多いです。大手内装施工会社でもオフィス系や商業系、文化施設系等、部署で分かれている事が多いです。施工だけの会社もあればデザインと施工を両方やる会社もあり、、テナント探しから入居(出店)コンサルまでやるような会社もあります。(どちらかと言えば、不動産テナント仲介営業から業務を拡大して入居(出店)コンサルから入居(出店)工事まで広げているケースが多いように思われます。)
具体的な業務内容
両職種とも見積、工事工程の作成、職人や材料の手配、現場の安全管理、品質管理、工程管理、お引渡しまで、と、言葉で書くと同じような業務内容になりますが、特に異なる点を以下に記載します。
建築施工管理
デザインや設計業務には関わることが少なく、出来上がった図面を基に積算や工事工程を作成して、工事段取りを行い、現場の管理を行います。会社やプロジェクト規模も様々で大手ゼネコンの大きな現場では数名~数十名単位の施工管理者が役割を分けて、基本常駐して現場を担当します。一方、住宅系では一人の管理者が複数の住宅を巡回管理する場合もあります。発注方式は様々で、建築系は纏めて発注したり、分離発注したりします。電気、設備系はサブコンに纏める事が多いです。
内装施工管理
多くの場合、クライアントやデザイナーとの打ち合わせから参加する事が多いです。営業や設計と完全に分離している場合もあるので会社次第でもあります。凝った意匠の場合は施工方法や制作方法を一緒に考えるような場合もあります。また、全ての工種を分離発注(軽鉄PB、木工、クロス、塗装、ガラス工事、電気工事、設備工事等)する場合もありますし、内装造作(設備系以外全部)、電気工事、設備工事と3種くらいに分けて発注する場合もあります。また、テナントの場合、ビル施設管理者との調整が多く発生します。
※ビル施設管理者の例→【簡単に解説】内装監理室とは?目的や役割と業務内容。
業務時間やの大変さ等
もちろんその会社やプロジェクトによります。私の経験上このような傾向があるように見てきた、として記します。
建築施工管理
業務時間
施工現場の進行に合わせた勤務が基本となるが、多くの場合、日中の工事に合わせて早朝8時から夕方が中心。夜勤が必要な場合もあるが比較的少ない。
難易度が高い点
プロジェクトが大規模になるほど、管理すべき範囲が広がり、事故リスクも増大する。規模の大きい建築工事の事故は関係者の生命に直結するため、徹底管理や指導とそのプレッシャーは大変である。内装メインの私からするとクレーン作業や仮設足場の高所作業は見ているだけでも震えます。大きい事故につながりやすいため、法規制も厳しいのでそれらを覚えて遵守する事も大変です。また、周辺への騒音や粉塵等もあるため、近隣住民等との調整等も重要です。現場環境が過酷な場合もありますが、昨今は割と現場事務所の環境も良くなってきたように思います。規模が大きいだけにまさに「地図に残る仕事」であったり、メディアで取り上げられる機会も多いかもしれません。
内装施工管理:
業務時間
店舗やオフィス工事では、施設営業終了後の夜間や休日に工事を行うことが多い。そのため、不規則な勤務時間が発生しやすいです。
難易度が高い点
クライアントの要望やデザイン性の実現が求められ、細部へのこだわりや細かい調整力が必要です。また、デザイン調整等に時間を要して、開業までの工期が短くなる場合が良くあり、まさに突貫工事となることが多いです。逆に突貫工事ができることがクライアントに対してもアピールポイントになっているケースもあります。洗練されたデザインや特殊な仕上げ工法、木工家具や造作等に関わる楽しさは内装工事の魅力だと思います。
その他留意点
元請けか下請けか
元請け業と下請け業でかなり、業務範囲の比重が異なります。元請けだと「クライアント対応」「全体管理」の比重が大きいです。打合せ等も多くなる傾向があります。下請け業の場合、クライアントと直接接する機会は少ないく、「現場管理」「制作管理」「細かい手配調整」が主な業務になります。下請けの場合、元請けがきちんとしているかどうかでも業務の苦労さが異なります。元請けと下請け両方やっているケースもありますが、多くの場合どちらかがメインです。給与面では元請けに軍配が上がる気がします。
自社工場があるか
自社で金物工場や木工工場を構えている企業もあります。ものづくりの楽しさが増します。調整業務も増しますが、自社故に融通が効く良さと文句を言われやすい面とあります。
グループ企業かどうか
前述の通り、大手グループ企業の子会社の場合、受注競争がほぼなく安定した受注環境の中で業務に取り組めるメリットがあります。一方でいろんなクライアントと接する経験や特定のプロパティ(施設)に偏る可能性があったり、親会社の意向が強すぎたりするデメリットもあります。
あとがき
どちらがお勧め、ということはありません、個人の趣向の世界だと考えます。内装施工管理の業務については本ブログでいろいろ掲載していますので見てみてください。建築も内装も施工管理という職種は大変であることは間違いないです。ただ「同じ釜の飯を食った仲」といいますか、同じような苦労をした同僚や関係者とは熱い友情のようなものが芽生えやすい環境でもあるかなと思います。