【簡単に解説】「防音」「遮音」「吸音」とは?とその違い。

  • 2024年11月18日
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  • 技術, 知識
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概要

「防音」は文字通り、「音(の伝播)を防ぐ事」なのですが、「遮音」と何が違うの?防音壁?遮音壁?吸音材?と混乱しますね。例「この部屋の“防音”効果を高めるために、“遮音”材と“吸音”材を使用します。」と理解するとわかりやすいと思います。「防音」という目的/効果を達成するために、「遮音」という“手段”と「吸音」という“手段”を採用する、という事です。“手段”という意味では他にも“制振”と“防振”があります。防音はまた総称としてイメージしておくとわかりやすいと思います。例えば「防音ドア」は、遮音性と吸音性と制振性の高い材を組み合わせて設計されていたりします。

定義

遮音

遮音とは、音がある空間から別の空間に伝わるのを防ぐことを指します。遮音性能の評価は、主に建物の壁や床、天井などがどれだけ音の伝播を防ぐかによって行われます。遮音性能が高いほど、音の漏れが少なくなります。
・質量の法則:重い材料ほど音を遮断する効果が高い。質量が2倍になると、遮音性能は約6dB向上します。
・気密性:隙間がないほど遮音性能が高くなります。音は空気中を伝わるため、隙間や穴があると音が漏れやすくなります。
・構造的分離:二重構造や浮床構造など、音の振動を伝えにくくする設計が有効です。

遮音対策の方法

遮音性能を向上させるための具体的な方法には以下があります。
・重い材料の使用:コンクリート、レンガ、石膏ボードなど、質量の大きい材料を使用する。
・二重壁構造:二重の壁を設け、その間に空気層や防音材を挟む。
・防音ドアや窓:密閉性の高い素材や構造を持つドアや窓を使用する。
・防音シートの貼り付け:壁や床に遮音シートを貼り付けることで音の漏れを防ぐ。
・隙間の封鎖:隙間や穴を気密性の高い材料で埋める。

遮音材の種類

遮音材にはいくつかの種類があり、目的に応じて使い分けます。
・石膏ボード:安価で施工しやすく、遮音性能も比較的高い。
・遮音シート:薄くて重いシートで、壁や床に貼り付けて使用。
・吸音材との併用:吸音材(例:グラスウール)を使用することで、反響音を抑えつつ遮音性能を向上させる。

吸音

音が物体に当たった際に反射せずにそのエネルギーの一部または全部を吸収することを指します。
・多孔質構造:吸音材には多くの細かい穴や隙間があり、音波がこれらの隙間に入り込むことでエネルギーが散逸します。
・繊維構造:繊維状の素材は音波を吸収し、内部で反射や散乱を繰り返すことでエネルギーを減少させます。
・表面吸収:柔らかくて密度の低い表面は、音波が当たった際にエネルギーを吸収しやすくなります。

吸音材の種類

吸音材にはさまざまな種類があり、用途や目的に応じて選ばれます。
・グラスウール:ガラス繊維でできた吸音材で、優れた吸音性能を持ち、主に壁や天井に使用されます。施工が比較的容易で、コストパフォーマンスも良好です。
・ロックウール:玄武岩を原料とした吸音材で、耐火性や断熱性も高いことが特徴です。音響性能も良好で、建築内装や防音工事によく使用されます。
・吸音パネル:吸音パネルは、繊維状や多孔質の材料でできたパネルで、壁や天井に取り付けて使用します。デザイン性に優れた製品も多く、オフィス、会議室、スタジオ、家庭用シアタールームなど、さまざまな場所で利用されます。
・吸音カーテン:吸音カーテンは、厚手の生地を使用して音を吸収するカーテンです。窓や壁に掛けることで、音の反響を抑えるとともに、遮音効果も得られます。

防振

振動が伝わるのを防ぐことを指します。防振は、振動が音となって伝わるのを防ぐために重要であり、特に構造物や機械の振動が問題となる場合に用いられます。
・質量の法則:重い物体は振動しにくい。質量が増えることで振動の伝播が減少します。
・柔らかい素材の使用:柔らかい素材や防振ゴムなどは振動を吸収し、伝わる振動エネルギーを減少させます。
・構造的分離:振動源と構造物を分離することで、振動が直接伝わらないようにします。

防振対策の方法

防振対策は、具体的な用途や環境に応じてさまざまな方法があります。
・防振マウント:機械の下に防振マウントを設置し、振動を吸収。
・防振パッド:機械の下に防振パッドを敷くことで、振動を減少。
・浮床構造:床を二重構造にし、その間に防振材を挟むことで振動を減少。
・防振壁:壁に防振ボードや吸音材を取り付け、振動と音の伝播を防ぐ。

制振

音の原因となる振動を抑えることで音の発生を防ぐことができます。防音対策としての制振は、音の伝播を防ぐために振動を減少させることが主な目的です。

制振対策の方法

振動を吸収する材料や構造を用います。制振ゴムや防振マット、ダンパーなどが使用されます。これらは振動エネルギーを吸収し、音の伝播を抑えます。

単位

音の“高低”を表す単位「Hz(ヘルツ)」と“大小”を表す単位「db(デシベル)」があります。

Hz(ヘルツ)

音の周波数を表す単位であり、1秒間に発生する音波の振動数を示します。周波数が高い音は高音、低い音は低音として聞こえます。
・低周波音: 20Hz以下
・可聴周波数: 20Hz – 20,000Hz(20kHz)
・高周波音: 20,000Hz以上

dB(デシベル)

音の強さ(音圧レベル)を表す単位です。
・0 dB:人間の聴覚の閾値(最も静かな音)
・30 dB:ささやき声、静かな図書館
・60 dB:通常の会話、オフィスの背景音
・90 dB:工場の騒音、大型トラックの近く
・120 dB: ジェットエンジンの近く、コンサートの音響

防音性能

防音性能を測定する際に使用される指標を紹介致します。

Dr値

どの程度遮断できるかをdBで指標化したものです。
・20dB: ピアノ等がかなりうるさいと感じ、TVや会話がよく聞こえる
・40dB: ピアノ等がはっきり分かり、TVや会話が小さく聞こえる
・60dB: ピアノ等がほとんど聞こえず、TVや会話が聞こえない

T値

日本工業規格(JIS)が定めたサッシやドアの遮音性能の基準です。T-1~4という4つの等級に分類されている指標で、等級別の透過損失と用途は以下の通りです。
・T-4:40db:レコーディングスタジオ・ラジオ放送スタジオ
・T-3:35db:ピアノ教室・劇場・映画館
・T-2:30db:会議室・カラオケルーム
・T-1:25db:工場

L値

日本工業規格(JIS)が定めたマンションの上階で発生した床衝撃音が、下の階でどの程度に聞こえるかの基準です。(軽量/重量や条件に異なるので“目安”と理解ください。)
・L-40:ほぼ聞こえない
・L-45:小さく聞こえる
・L-50:聞こえる
・L-60:良く聞こえる
・L-70:うるさい

吸音率

材料が音をどれだけ吸収するかを示す指標で、入射した音のエネルギーに対して、反射しなかった音のエネルギーの割合を表します。0~1までの値となり、大きいほど反射しないことを表します。
0.0:音を全く吸収せず、すべて反射する。
1.0:音を完全に吸収し、全く反射しない。
(例)500Hz
・コンクリート打ちっぱなし面   :0.02
・石膏ボード9~12mm(空気層45mm):0.09
・グラスウール16~24kg(50mm)  :0.9

法律

防音に関わる法律は、騒音や振動の規制を通じて、環境や健康を保護することを目的としています。日本における主な関連法律を以下に挙げ、その概要を解説します。

騒音規制法

騒音規制法は、環境中の騒音を規制するための法律です。特に、工場や建設現場から発生する騒音を対象とし、地域ごとに設定された騒音基準(db)を超えないように規制しています。
・騒音の発生源ごとに規制基準を設定。
・市町村が騒音の測定や監視を実施。
・違反があった場合の改善命令や罰則規定。

建築基準法

建築基準法第30条

共同住宅等の各戸の界壁は小屋裏又は天井裏に達するものとするほか、その構造を遮音性能に関して政令で定める技術的基準に適合するものとする規定があります。

建築基準法施行令第22条3

法第30条の政令で定める技術的基準は、振動数の音に対する透過損失がそれぞれ数値以上であることとしています。
・振動数125Hz:透過損失25db
・振動数500Hz:透過損失40db
・振動数2000Hz:透過損失50db

品確法関係

住宅の品質確保の促進に関する法律における住宅性能表示制度の中で界壁の遮音性能に関して次のような等級区分が規定されている。
等級区分:透過損失の水準
等級4:Rr-55以上:特に優れた空気伝搬音の遮音性能
等級3:Rr-50以上:優れた空気伝搬音の遮音性能
等級2:Rr-45以上:基本的な空気伝搬音の遮音性能
等級1:建築基準法に定める空気伝搬音の遮断の程度が確保されている程度
※Rr=dBと同様です。

東京都安全条例第11条の4

ホテル、病院、寄宿舎の用途に供する特殊建築物の主たる用途に供する居室相互間
又は、これらの居室とその他の部分との間仕切壁は、建築基準法施行令第22条の3に定める遮音上有効な構造にしなければならない。

雑学

防音対策に関する興味深い雑学をいくつか紹介します。これらの雑学は、防音対策を考える際のヒントになるかもしれません。防音だけでなく、デザイン性や自然素材の利用も考慮することで、快適で機能的な空間を作り上げることができます。

白色雑音(ホワイトノイズ)

すべての周波数が均等に含まれた音であり、オフィスでの防音対策や集中力向上に使われることがあります。
・雑音のカモフラージュ: 白色雑音を流すことで、環境音をカモフラージュし、集中しやすい環境を作り出します。
・睡眠改善:一部のオフィスでは、昼寝スペースに白色雑音を使用し、リラックス効果を高めています。

アコースティックパネル

防音効果を持つアコースティックパネルは、デザイン性も重視されるようになっています。
・アートと防音の融合:一部のアコースティックパネルは、アート作品のようなデザインが施されており、オフィスのインテリアとしても利用されます。
・ブランドイメージの向上:見た目に美しい防音パネルは、企業のブランドイメージ向上にも貢献します。

植物の防音効果

オフィス内に植物を配置することが、意外にも防音効果を持つことが知られています。
・音の吸収: 植物やその土壌が音を吸収する効果を持ち、環境音を和らげます。
・視覚的なリラクゼーション: 植物の緑は視覚的にリラックス効果を与え、ストレス軽減にも寄与します。

音のカーテン

音のカーテン(Acoustic Curtain)は、簡単に設置できる防音対策として注目されています。
・移動可能::音のカーテンは簡単に移動でき、必要に応じて防音効果を得たい場所に設置できます。
・多機能:防音だけでなく、断熱効果も兼ね備えているため、エネルギー効率の向上にも役立ちます。

日本伝統の防音技術

日本の伝統的な建築には、自然素材を活用した防音技術が多く使われていました。
・紙障子の効果: 紙障子は音を柔らかく拡散し、反響音を抑える効果があります。
・畳と襖の組み合わせ: 畳と襖(ふすま)は、音を吸収しつつ、部屋全体の音響バランスを整える役割を果たしていました。

あとがき

以上となります。
専門領域になりますので、掘り下げるためにはその道のプロや書籍を頼る必要がありますが、概念や数値的な目安を知っておくと何かと便利なシチュエーションも多いので、気になる文言や数字だけでも記憶しておく事をお勧めいたします。

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