今回はオフィスビル管理です。私の専門は内装監理ですが、内装工事と建物管理は切っても切れません。ストック活用や建物の長寿命化というこれからの日本(地球?)課題に取り組む幅広な知識を得るべきと考えますので、まずは一般的なオフィスビル管理の概要とその法規概要について解説したいと思います。
オフィスビル管理の業務概要
オフィスビル管理は、ビルの運営や維持、テナントの満足度向上を目的としたさまざまな業務を総合的に行う活動です。これには、建物の資産価値を維持・向上させるためのメンテナンスや、ビルを利用する人々が快適で安全に過ごせる環境を整備するための業務が含まれます。
・清掃
・設備管理
・警備
・ビルサービス
清掃
清掃は、ビル内外の衛生状態を保つための基本的な業務です。利用者の健康を守り、建物全体の印象を良くする目的があります。綺麗にするだけでなく、廃棄物の処理なども清掃業務に含まれます。
・日常清掃 :廊下、トイレ、エントランスなど日常的に汚れる場所を1日に1回以上行う清掃。
・定期清掃 :床のワックスがけや窓ガラスの清掃など、週単位や月単位など一定の間隔で行う専門的な清掃。
・臨時清掃 :汚れが目立つ部分やアクシデント等で汚れてしまった部分を不定期に実施する清掃。
・特別清掃 :ビル外壁やエアコンフィルターの清掃など、特殊な器具や技術が必要な清掃。
清掃業務は、美観を保つだけでなく、施設を長持ちさせるためにも重要です。
設備管理
ビル内の機器やインフラが安全かつ効率的に稼働するようにする業務です。
・日常点検 :設備が正常に運転しているかを日常的に確認する作業で、比較的短い時間で済む簡易な点検が中心です。
・定期点検 :設備を計画的に詳細に検査する作業で、設備の寿命を延ばし、法令に基づく管理を確実に行うために実施されます。
・修繕 :設備が故障したり劣化したりした場合に、復旧や改善のための作業を行うことを指します。
警備
警備業務の目的はビルの安全を守る事です。大きく火災や地震による被害を防止する「防災」と不法侵入等の犯罪を防止する「防犯」に大別されます。
・常駐警備:警備員が現場で巡回し、不審者や異常事態をチェック。
・監視業務:監視カメラやセンサーを活用して、建物全体のセキュリティ状況を遠隔で確認。
・出入管理:IDカードや受付での手続きを通じて、許可された人のみが出入りできるように管理。
・緊急対応:火災や地震などの災害時の初期対応や避難誘導。
テクノロジーの活用により、セキュリティシステムの高度化が進んでいます。
ビルサービス
オフィスビル管理におけるサービスは、テナントや利用者が快適に過ごせるようサポートする活動を指します。
・テナント対応:トラブル時の窓口対応や問い合わせへの迅速な対応。
・共用施設管理:会議室やラウンジの予約・管理。
・イベント運営:ビル内でのイベントやキャンペーンの企画・運営。
・付帯サービス:郵便物の受け渡し、荷物の管理など。
・ITサポート:Wi-Fi環境の整備や、デジタルサイネージの運用。
サービスの充実度は、ビルの価値やテナントの満足度に直結します。
法律と資格
ビル管理は安全性や衛生面を確保するため、さまざまな法律に基づいて行われます。また、ビル管理に携わるためには、業務に応じてさまざまな資格が必要です。
ビル管理法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)
・目的:建築物の衛生環境を維持し、利用者の健康を守ること。特に、大規模な建築物内の空気、水質、清掃などの衛生管理基準を定めている。
・概要:特定建築物(延べ面積が一定規模以上のビル)を対象に、空気環境の管理、水道水の水質管理、害虫の防除、清掃などについて基準を設け、衛生環境の適正管理を義務付けている。
・資格:建築物環境衛生管理技術者(ビル管技術者):特定建築物の管理者は、選任が義務付けられている。
水道法
・目的:安全で清潔な飲料水を供給することを目的に、水道事業の管理・運営方法や水質基準を規定。
・概要:水道水の供給施設において、浄水場から蛇口までの水質管理基準を規定し、定期的な検査を義務付けている。
・資格:水道技術管理者:一定規模以上の水道事業に選任が必要。貯水槽清掃業務管理者:ビル管理業務として選任されることがある。
建築基準法
・目的:建築物の安全性、衛生性、利便性を確保し、都市計画の整合性を図ることを目的とした法律。
・概要:建築物の構造、安全基準、耐火性能、採光や換気の基準を定めており、新築・改修時の確認申請を義務付けている。
・資格:建築士(一級・二級):建築確認申請や設計業務を担当する。建築物調査員:定期報告業務を実施。
電気事業法
・目的:電気設備の安全性を確保し、電力供給の安定を図る。
・概要:電気工作物(電力を利用する設備や装置)の設置・管理に関する規定を定め、発電・変電設備の安全基準や管理義務を定めている。
・資格:電気主任技術者(第一種~第三種):事業所ごとに選任が義務付けられている。
消防法
・目的:火災や災害から人命と財産を守るため、防火管理や設備基準を定める。
・概要:消防設備(消火器、スプリンクラー、非常警報装置)の設置基準や防火管理者の選任、避難計画の策定を義務付ける。
・資格:防火管理者:一定規模以上の建築物で選任が必要。危険物保安監督者
労働安全衛生法(ボイラー及び圧力容器安全規則)
・目的:ボイラーや圧力容器の安全管理を徹底し、労働者の安全と健康を守る。
・概要:高圧機器の安全基準を定め、設置・運転・保守点検についての規定を設けている。
・資格:ボイラー取扱作業主任者
高圧ガス保安法
・目的:高圧ガスの製造、貯蔵、消費、輸送における事故防止を目的に、安全管理基準を規定。
・概要:高圧ガスの製造設備や貯蔵設備に関する設置基準や管理基準を定め、保安体制を強化している。
・資格:冷凍保安責任者
省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)
・目的:エネルギー資源の効率的利用と省エネルギーの推進を目的とする。
・概要:建築物や工場などのエネルギー使用状況を評価し、省エネ対策を義務付ける。また、定期報告制度を設けている。
・資格:エネルギー管理士:エネルギー使用状況の監視や改善策を担当。
まとめ
今後、より具体的な資格や法定点検等も解説していきたいと考えていますが、まずは大概要を纏めてみました。みなさまの理解促進につながれば幸いです。