内装工事関連のお仕事をされてる方々には、「アンカー」て何ぞ?となる方も一定数いるのではないでしょうか?
・アンカー?インサート?
・アンカーはB工事で墨出しはC工事で?
・アンカー選定下さい?
・アンカー?あと施工アンカー?
関わってきた案件により濃淡はあれど、よくわからないまま「アンカー」について対応してきた方々のために、『このくらい知っていれば内装工事では大丈夫だろう』の程よい情報量で解説したいと思います。
そもそもアンカーとは?
アンカーとは、建築物の床壁天井コンクリート等に物を取り付けるために工夫した金物類です。(注:吊りボルトに限らないということ。若い頃の私はインサートのことをアンカーだと思っていました。)先付アンカーと後付アンカー(あと施工アンカー)があり、新築時にコンクリートを打ち込む前に所定の位置に設置しておくアンカーが「先付アンカー」、コンクリートの硬化後、所定の位置に固着させるアンカーを「後付アンカー」と言います。呼称として他にも「あと施工アンカー」とも呼ばれます。ですので、内装工事関係者が改修工事やテナント工事で必要とする知識はほぼ「あと施工アンカー」です。
あと施工アンカーの種類
埋め込み方法などによって、「金属系アンカー」「接着系アンカー」「その他のアンカー」に分類されます。まずみなさまが1番接する機会が多いのが、天井に造作や設備を吊り下げルために吊りボルトを設置するための「めねじアンカー」だと思います。埋め込み方法などによって、「金属系アンカー」「接着系アンカー」「その他のアンカー」に分類されます。「めねじアンカー」で多いの“本体打込み式“又は“内部コーン打込み式”のタイプですが、このタイプは「金属系アンカー」に分類されます。「このようなアンカーがあるんだな」とわかった上で、必要なアンカーを選定する、もしくは選定を依頼するようにしましょう。
アンカーの施工手順
・1.墨出し:穿孔する位置の決定。
・2.穿孔:アンカーサイズに適応するドリルで穿孔する。

・3.切粉:ブロワーなどを使用して孔内の切粉を除去する。
・4.挿入:ハンマーを用いて軽くアンカーを叩きながら所定位置まで挿入し、専用打込み棒で打ち込む。
・5:ボルト類を使用して器材などを取り付ける。
アンカー注意点
テナントB工事
テナント工事の際は、「アンカーはB工事、墨出しはC工事」という事が良くあります。躯体や建物設備に関わる工事はC工事では行わないようにルール化してるビルが多いためです。ただし、その下にぶら下げる造作や機器はC設計者が計画しているので、墨出しはC工事でお願い、となります。必ずビル管理側に工事区分を確認して下さい。
ABC工事の詳細→【簡単に解説】A工事・B工事・C工事を理解する。
配筋、配線
C工事で行うこともあります。スラブに打ち込みますが、どこに何が埋設されているかわかりません。配筋や配管に当たってしまう可能性がありますので、事前にビル管理側に確認するか図面を確認するなどして、問題なく打てる場所か事前確認して下さい。最悪、配筋の場合は下地掘る際に当たって気付けるので大事には至りません(劣化させるので良い事ではありません)が、電気や給排水の配管をぶち破ってしまうと、停電などの電気トらぶるや水漏れとなり、躯体を掘り起こしての補修工事となり、大事故となります。
荷重
荷重の計算は設計者の仕事です。重いものを吊る時はアンカーの引っ張り強度を計算と揺れやブレを考慮して、設置箇所や個数を計画して下さい。
他の下地から取らない
手癖が悪い人やそもそも全く悪い事だと知らない人もいますが、他の設備を吊り下げている天井吊りボルトなどから、控えをとることはやめましょう。自分達の吊りものは自分達の下地で完結するようにしてください。例えば天井を組んでいるシステム天井の場合はシステム天井そのものの荷重と地震による揺れなどを計算した上で、強度や壁とのクリアランスを計画しています。勝手に控えをとってしまうと強度が不足したり、計画と異なる挙動が発生して、地震の際に天井崩落等の大事故になります。例えば空調機を吊り下げているボルト等から撮った場合、位置がずれたり傾いたりして、関連する設備との接触などにより、振動異音や故障トラブルになり、なります。また、仮にその控えが原因でなかったとしても、もとの設備に不具合が発生した際の調査等結果、原因の嫌疑がかけられ、調査に呼ばれたり、手直しさせられる可能性が高いです。設計者が関係者と協議の上、設計して決定した場合は問題ありません。
インサート
アンカーと混同されやすく、また実際に混同して使用されてる方も多いため、初心者にはさらにややこしくする金物がインサートです。インサートは天井スラブ吊りボルト用にコンクリート敷設前に設置する金物です。
写真
クリップ
あと施工アンカーをしなくても、天井デッキスラブの場合には、吊りボルトを下げる方法かあります。スラブクリップと呼ばれる金物を使用する方法です。強度の信頼性の面ではあと施工アンカーに劣るので、禁止されている場合もありますが、施工性や費用、上記トラブルになりにくい事から、好まれる状況も多々あります。選択肢として知っておいて下さい。
吊りボルトの径を間違えない。
吊り下げるものの施工者やメーカーに確認する。建築現場で広く使われているのは今でも3分ボルトが主流かと思われます。
アンカーの選定とネジの規格
アンカーを選定する際は差込ボルトのネジの規格も決めておく必要があります。一般的に使用されているのは“3ぶボルト”と呼ばれています。表記は以下です。
・W3/8
・3分
???となりませんでしょうか?ネジは規格や呼び方が独特なので、ついでに簡単に解説します。
ネジの規格
大きく2種類あります。“Mネジ”と“Wネジ”です。
①M(メートル)ねじ
ISO(国際基準化機構)及びJIS(日本工業規格)の規格です。国内でも広く使用されています。
例)M10×65の六角ボルト
→M=規格表示
→10=10mm(ねじの直径)
→×65=65㎜(首下の長さ
②W(ウィット)ねじ
ISO規格からは外れておりJISでも廃止されています。一部の業界(主に建設業)では今も使われています。
例)W3/8(さんぶ)の全ねじ
→W=規格表示
→三分=一分(3.175)×3=約9.525(ねじの直径)
※互換性は無いので、ボルトとナット(アンカー等)を使用する場合はそれぞれの規格で合わせて使用する必要があります。大きさが近い場合、なんとなく入る事もありますが、隙間が出来てしまうので、事故のもとになります。
ボルトの呼称
寸切とは、頭がなく全体がねじ部になっているねじです。 必要に応じて現場で好きな長さに切断して使用したり、両側をナットにして長さを調節して使用したい場合に使われます。 大きなものは建築材料としてよく使われますが、小さなもは工作などにも利用できます。 『長ねじ』、『全ねじ』、『アンカー』などの呼び方もあります。
・長ねじボルト、全ねじ、寸切(ずんぎり、すんぎり)
まとめ
テナント工事で行うアンカー工事はあと施工アンカーのこと。多くの場合、3分の吊りボルトで機材や造作を吊る。B工事に対しては、用途(3分ボルト等)を伝える。原則、他の下地と独立させる。