大型の商業施設やオフィスビルには「中央管理室」や「防災エンター」と呼ばれる部屋(機能)があります。お仕事の関係で関わった事がある方も少なからずいるのではないでしょうか?ただ、きちんとその機能や違いを理解している方は少ないと思います。ここではざっくり解説して、お仕事する際に混乱しないようにお手伝いさせて頂けたらと思います。
概要
中央管理室
・目的:施設全体の機能(電気、空調、照明など)の効率的な運用・維持管理。
・役割:空調、電力、給排水などの設備運用管理。館内環境の維持。エネルギー消費の最適化。
・法律:建築基準法
防災センター
・目的:災害や緊急時に備え、施設内の安全と防災を最優先に管理する。
・役割:スプリンクラーや火災報知器などの消防設備の監視と管理。災害発生時の避難指示などの緊急対応。防災訓練の計画、実施。
・法律:消防法
設置基準
設置基準やその根拠となる法律について解説します。
中央管理室
設置基準概要
建築基準法施工令で規定されていて、非常用エレベーター必須の高層ビルか機械換気設備の大きい地下街に設置する必要があります。必須要件としては人命に関わる設備の制御が必要という理解ができます。
設置基準詳細
建築基準法施行令第20条の2第2号
法第三十四条第二項に規定する建築物(高さ31mを超える非常用エレベータの設置が必要な建築物)又は各構えの床面積の合計が千平方メートルを超える地下街に設ける機械換気設備(一の居室のみに係るものを除く。)又は中央管理方式の空気調和設備にあつては、これらの制御及び作動状態の監視を中央管理室(当該建築物、同一敷地内の他の建築物又は一団地内の他の建築物の内にある管理事務所、守衛所その他常時当該建築物を管理する者が勤務する場所で避難階又はその直上階若しくは直下階に設けたものをいう。以下同じ。)において行うことができるものであること
防災センター
設置基準概要
消防法施工規則で規定されており、一定の基準以上の大規模な建築物等に設置する必要があります。消防用の設備等を監視操作する機能を設けて、消防隊が安易に出入りできる場所で、中央管理室等に配置する必要があります。また細かい規定が各自治体の条例で定められています。
設置基準詳細
消防法施行規則第12条8
高層階を有する建築物、大規模な建築物、その他の防火対象物の中で、次のイ~ハに揚げるいるものに設置されている屋内消火栓設備には、当該設備の監視業務、操作業務などを行うことが出来て、かつ、消防庁の長官が定める基準に適合する総合操作盤【総合監視盤】(消防用の設備等、または特殊消防用の設備等の監視、操作等を行うために必要な機能を備えている設備のこと。以下同様)を、消防庁の長官が定める該当する設備を有する防災センター(総合操作盤【総合監視盤】その他に類する機能を備えた設備を有し、防火対象物の消防用の設備等又は、特殊消防用の設備等、その他に類する防災の為の設備を管理する場所。以下同様)、 中央管理室(建築基準法施行令 第20条の2第2号に規定されている中央管理室を指す)、守衛室やその他これらに類する場所に設けること。
イ 令別表第1(1)項~(16)項までに揚げる防火対象物で、次のいずれかに該当するもの
(イ)延べ面積が50,000㎡以上の防火対象物であること
(ロ)地階を除く階数が15階以上で、かつ、延べ面積が30,000㎡以上の防火対象物であること
ロ 延べ面積が1,000㎡以上の地下街であること
ハ 次のいずれかに該当するもの(上記「イ」又は「ハ」に該当するものは除く)の内、消防長または消防署長が火災予防上必要があると認め、指定するもの
(イ)地階を除いた階数が11階以上で、延べ面積が10,000㎡以上の防火対象物
(ロ)地階を除いた階数が5階以上で、延べ面積が20,000㎡以上の特定防火対象物
(ハ)地階の床面積の合計が5,000㎡以上の防火対象物
機能
中央管理室
・建物内の設備監視システムを操作。
・空調、電力、給排水などの設備運用管理。
・エネルギー消費の最適化と環境管理。
・建物の環境条件(温度、湿度、照明)を維持。
・緊急時は非常用電源の管理や、建物の環境維持を行い、防災センターと協力。
防災センター
・火災報知器や煙感知器などの消防設備の監視。
・防災設備(スプリンクラー、消火栓、避難誘導灯など)の管理。
・災害発生時の緊急対応(避難指示、消防署への通報など)。
・地震や停電など非常時の対応や指揮。
・防災訓練の計画・実施。
まとめ
両者が別々の部屋として設置される場合もあれば、一体化した部屋として設置される場合もあります。特に大規模施設では、業務の効率化のため、防災センターと中央管理室が一緒になっていることもあります。また、防災センターと中央管理室が情報を共有し、連携して運用するのが一般的です。例えば、火災が発生した場合、防災センターが避難誘導を行い、中央管理室が空調を止めて煙の拡散を防ぐ、といった協力が求められます。防災センターは「人命と安全」に直結する対応を行う防災拠点です。中央管理室は「施設運用の効率化と快適性」に関わる設備の統括管理を行う拠点です。どちらも建物運営には欠かせない存在であり、それぞれが役割を分担しつつ、緊急時には密接に連携して対応しています。